世の中そう甘くないぞ。もっと勉強しとけ! (大学生起業の相談) August 17, 2013 (Sat)

知り合いのそのまた知り合いの大学生から、起業の相談を受けました。大学の先輩(社会人)と人材派遣会社を起こしたいとのこと。

自社(B)より語学教材の販売をする会社(A)に営業員(C)を派遣し、電話でアポイントを取らせて、Aが顧客を訪問し成約した場合にAから売上の30%を報酬としてBが受領。Cには、そのうちの半分(売上の15%)を完全歩合として払うといったビジネスモデルでした。この場合、Bは派遣業や職業紹介業の許可を取得する必要があるか、といった相談内容でした。人を雇うことについての基礎知識が欠けているようでしたので、次のように整理して説明しました。

語学教材販売会社(A)と自社(B)の関係について

会社と会社の間の契約は基本的に自由です。AからBへの支払いが営業成果に対する歩合であっても、AB間の契約は、請負契約でも派遣契約でもかまいません。ただし、後述するように、CがBから受け取る報酬は完全歩合であることから、BとCは雇用関係になりえないので、AB間の派遣契約は成り立ちません。派遣とは、Bの雇用するCをAの指揮命令を受けてAで働かせることであるからです。よって、Bは、Aから教材販売のアポイント業務を請け負う形とすることになります。業務請負とは、請け負った側の自由裁量で仕事を完成させる(この場合、B(所属のC)がAの販売につながる訪問先を獲得すること)契約形態です。

自社(B)と営業員(C)との関係について

BがCを雇用する場合、結果が出ようが出まいが、労働に対する対価は支払わなければなりません。少なくとも、拘束時間に対する最低賃金は支払わなければならないのが雇用です。ですから、完全歩合制を違法でなく実現しようと思えば、BとCの関係は雇用にすることはできません。この場合、Cは、Bが請け負うアポイント業務を下請けすることになります。Cは社員とかアルバイトといった雇われ人ではなくて、個人事業者となります。

同じ労働を提供するのであっても雇用は、最低賃金が保証されますが、業務請負は、請け負った仕事が完成しなければ、一銭にもならないのが普通です。また、雇用は雇い主の直接の指揮命令を受けますが、業務請負は極端な話、契約通りに仕事が成し遂げられれば途中の過程は問われないのです。

BとCが業務請負契約を結んだとしても、BがCの勤怠管理(タイムカードがあるなど)をするのであれば、その管理は指揮命令であるため雇用と判断され、偽装請負となり、完全歩合は違法となってしまいます。労働法は強行法規ですから、Cが契約時はどんなに納得していたとしても、労働法に抵触する契約は無効になることにも注意すべきです。

派遣業や職業紹介業について

派遣契約とは、派遣元(B)とCが雇用契約を結び、派遣元(B)と派遣先(A)が派遣契約を結んで、CがAの指揮命令にしたがい労働を提供するものです。上で述べたように、完全歩合のビジネスモデル上、BはCを雇用することができませんから、派遣は成り立ちません。

職業紹介は、この場合は、Bが紹介によりAとCの雇用契約を成立させて、Bが紹介料を得ることです。職業紹介業は、永続的に紹介料を得ることはできませんし、紹介料にも上限があります。Bが常にAとCの間に立つのであれば、AはCを直接雇用できないので、職業紹介ともなりえません。

結論

このビジネスモデルは、「AとBは業務請負契約」、「BとCも業務請負契約(左記契約の下請)」であれば、理屈上は法に抵触しません。しかし、実際問題、AがCに対して具体的・直接的な指揮命令を行えば、業務請負契約でなく雇用というべきであり、BC間の雇用契約とAB間の派遣契約が必要となります。当然、BはCに対して労働の対価としての賃金の支払いをしなければなりません。実際には、問題が起きることが多いビジネスモデルです。

顛末

相談者のビジネスモデルのメモには、「バイトの子が働き続ける限りいただく!!」との記述もあって、口をきいたバイトから「永久にピンハネする」ことを目論んでいるとも受け取れました。ストレートに実行すれば、それは、労働基準法第6条「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」に抵触します。

この件はもともと、知り合いつながりということで無料の案件でしたが、(正直に書きすぎたためか、)メールを送った後、相談者はそれきりぷっつり。相談者は優秀な大学に在籍し経営学を専攻しているにも関わらず、人を雇うというベーシックな部分の常識がなく、安易な「口入れ稼業」を志向していることが驚きでした。ビジネスモデルを構築するのであれば、もっと実際に即した勉強をしておくよーに。それに、メールで礼のひとつも書く社会常識もあったほうがいいんじゃないの? と思ったのでした。

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